秘教学のバックストーリー 

① 本は誰が書いてるの?

本の表紙には「アリス・ベイリー著」とあるのに、読むと「ジュワルクール大師の執筆」とある。いったいどういう事……? と混乱する方は少なくありません。それは「ジュワルクール大師によるテレパシーによって伝わった言葉をタイピングした女性がアリスベイリー」ということ。彼女自身はっきりと「私はタイピストにすぎない」と書いてます。

*DK大師 = ジュワルクール大師

ジュワルクール大師(以下DK大師)はチベット奥地の僧院で院長をしていたので、人類に伝えるべき大切な智慧があっても、出版販売までは物理的に難しいことでした。そのため、アメリカに住んでいたアリスベイリーにメンタルテレパシーで接触。30年間、一度も会うことなく18冊の本を出版しました。(大師から小包は届いてたそうです)出版上の制限で著者は「アリスベイリー」とありますが、一冊目のはじめから「この本を実際に書いたのはDK大師であり、その内容についての責任はすべて大師にある」と明言されています。なのでクラスや講座は「著者はDK大師」という認識で進められます。アリスベイリー本人が書いた著作も数冊ありますが、秘教学といえばDK大師の著書と理解してよいでしょう。

「これらの本は彼のものであって、私のものではありません。基本的に責任は彼にあります。彼は私が間違うことを許さず、最終原稿にも極めて注意深く目を通します。(中略)…私はチベット人(DK大師)の言ったことをそのまま、正確に発表しました。」

(未完の自叙伝)

②アリスベイリーはどんな女性?

アリス・ベイリー

DK大師が著者ですが、アリスベイリー自身の人生、考え方や在り方の探究も、とても深い示唆が多くあります。大師方とテレパシーでつながって仕事をすることは、「私は選ばれた人間」という自己顕示欲につながる危険性もありますが、DK大師はそのような特権意識に囚われる人を書記には選びませんでした。確かにアリスベイリーは選ばれました。しかし、その仕事を忍耐強く続ける力を獲得するために、幾多の試練を人生前半に経験しています。

彼女はイギリスに生まれ、幼少期に両親を失い、裕福ながらも厳格な親族に育てられ、熱心なキリスト教徒として成長。20代インドで宣教師をしている時に出逢った牧師と結婚。新天地を求めてアメリカに移住するも、夫のドメスティックバイオレンスにより幼い三人の子供を抱えたまま離婚。どん底の貧困生活を経験します。毎日の労働と家事、子育てに時間を奪われますが、心の安息を求めて近所の集会、ブラヴァツキー夫人の「シークレットドクトリン」を読む神智学のクラスに参加しました。「真剣に学びたくて参加したわけではなく、同郷の女性と話したくて通い出した」と後年に書いているように、最初のきっかけが偶然であり「癒し」であったとしても、知的なアリスは徐々に「シークレットドクトリン」に夢中になります。

そしていつしか講座を担当できるほどに智慧がつき、神智学協会にも所属するようになったある日、家事の疲れを癒すために出かけた屋外で、彼女ははじめてDK大師のテレパシーによるコンタクトをうけます。しかし、彼女は恐ろしさのあまり断ります。三人の娘を育てるためには、あまりに危険な選択です。しかし大師方による説得を聞いて、1919年引き受けました。そこから30年、亡くなる半年前までDK大師の智慧を受けとり続けます。

「一般向けに書くことが望ましい本が何冊かあり、あなたならそれを書くことができる。やってみてくれませんか?」
「とんでもありません。私は呪われたサイキックではありません。そのようなものには巻き込まれたくはありません」

(未完の自叙伝)

「スピリチャルな仕事をしたい。霊的存在とかかわりたい」と願う人に、ぜひアリスベイリー自身が書いた「未完の自叙伝」をおすすめします。彼女があじわった試練、絶望すべてが霊的な仕事をするプロセスであり、彼女自身の言葉によって「神への奉仕」がいかなるものなのか?を理解できるでしょう。ブラックユーモアが存分なアリスですが、謙虚さと優しさあっての言葉なので、納得させられます。

彼女の晩年は再婚したフォスターベイリー氏の支えのもと、世界中を旅して秘教学を広めました。メンタルテレパシーによる出版…という理由で、所属していた神智学協会のみならず世界中から批判されましたが、不屈の精神で出版し続けた背景には「テレパシーで情報をうけとりタイプして読むたび、想像を絶する真理に驚き、人生経験を積み重ねるうちにそれが正しい知恵だと理解できたから」と書いています。夫や同志の理解に支えられて、波乱万丈な人生は1949年のニューヨークで閉じました。彼女の自叙伝の「まえがき」を書いた最愛の夫フォスター。彼の言葉によって、アリスが引き受けた仕事がどれだけのプレッシャーだったのか?を知ることができます。世界に大きな影響を与える霊的な仕事は敵もつくります。「引き受けたくない」と思うのは当然のことでしょうが、それを引き受けたアリスの勇気には感謝しかありません。

「アリスが責任を持っていた世界的規模の組織活動からくる多忙さ、彼女が敏感に感じ取っていた複雑で緊迫した人類の状態、彼女が取り除こうと奮闘していたあらゆる地域の善意の人々の無益感と否定的な感覚、 世界に事業を広げようとしても経済的に力が及ばないというストレス、ただ単に資金がないために必要を満たせず、折角のチャンスをものにできないフラストレーションと失望、こうしたプレッシャーが募っていき、完全な疲労状態を引き起こしていった。肉体には瞬時の休息も与えられなかった。 そして、心臓血液の状態は確実に悪化していった」

(未完の自叙伝)

「感謝したいことが沢山あります。豊かで充実した人生を送ることができました。世界中の大勢の方に親切にしてもらいました。」

(アリスベイリー最期の言葉~未完の自叙伝)

③メンタルテレパシー

もしアリスが生きていたら「メンタルテレパシーはチャネリングではない」と付け加えて!…と指示されるでしょう。(厳しい上司だろうなぁ…)DK大師自身も秘教本で繰り返し相違を指摘しています。それはなぜでしょうか?チャネリングは一方的に受信してしまう伝達方法で、受信中に当事者は無意識であり、目覚めたあと「何を語ったか覚えていない」のです。誤解を恐れずにいえば「何かに明け渡した。乗っ取られた感覚」です。しかし、メンタルテレパシーは受信している時も意識が明瞭であり、何が起きているのか?を明確に覚えており、それを自分で記録できます。

「いわゆるサイキック的な著作には様々な種類があります。人々はこれらすべてを同じようなものと考えがちです。希望的な思考を表現したものもあれば、非常に魅力的で、心地よく、善意に溢れ、キリスト教的で、潜在意識的なものが表わされたものもあれば、自動書記や想念の流れの傍受(あらゆる人が終始このようなことをしています)もあれば、完全な偽物もあります。一方、強い主観的なテレパシーによる連結や、ある高位の霊的な源からの印象づけに対する反応の結果である著作もあります。」

(未完の自叙伝)

人類はいまサイキック的なチャネリング能力を封印させ、メンタル体を発達させた知的かつ(秘教的な)直観をベースにしたテレパシーを発達させる時期にあります。「会いたい‥と思ったらすぐに会えた」とか「相手に願ったことがすぐに起きた」などの現象は、メンタルテレパシーが現実的に不可能ではない…という兆しに感じます。

「いつの日か、真のテレパシーによる通信とビジョンが、言葉と文書の代りをするようになるだろう」

(ホワイトマジック)

④出版された年代と意図

アリスベイリーはニューエイジ(新時代)という概念を確立した人…として世界で認知されています。言葉を変えると「アクエリアス時代」です。無窮の叡智がDK大師によって世に出された動機には「大切な時代の節目で人類が間違った方向へと向かわないように…」という親心、ここで忘れてはならないのは、仏教、キリスト教、イスラム教などの宗教、または哲学者による智慧など、この世界の思想に影響を与えてきたものは、実際は「一本の啓示である」という事実です。霊的世界の智慧が下ろされるのは、いまに始まったことではなく、昔から延々と続いている現実であり、近代はブラヴァツキー夫人、そしてアリスベイリーによって、そして未来も新たな啓示は下ろされていくでしょう。

新しいタイプのグループの働き手たちは均整のとれた個人であり、手がけるほとんどすべてのことを行う能力があるが、基本的な衝動は物質界よりも思考の世界で仕事をしようというものである。したがって、彼は様々な方法で役立てられることが可能なため、ハイラーキーにとって有用である。というのは、彼の柔軟性と経験、接触の安定性をすべて、グループが必要とするものに従属させることができるからである。

もちろん、この新しいグループ・タイプの真の典型になる人物は今後何十年も現われないであろう。そのような人は真のアクエリアス人であって、普遍的な交流と強い感受性があり、メンタル器官は高度に組織化されており、アストラル装備は主に高位の霊的波動に反応し、エネルギー体は力強く、しかも統御されており、肉体は、通常の言葉の意味ではがっしりとはしていないが、健全である。

(ホワイトマジック)

そして秘教学を持ち出すまでなく、この時代の変化のスピードが速いことは誰もが実感しているはずです。「今までとは何かがちがう」インターネットや交通機関の発達など人類由来の変化もありますが、地震や気象災害など惑星地球に由来する変化も同時に起きています。DK大師は「秘教学が真に理解されるのは(出版された時代ではなく)かなり後になってからだろう」と書いてますが、それがちょうどいま(2018年現在)なのだと思います。この本に書かれていることは2025年までには理解され実践されなければならず、そのために1919年から準備が始まりました。ちょうど2020年で本が出版されて100年。秘教学は「人類よりも遥か先の霊性を生きる者(イニシエート)」によって書かれた本です。本の内容を「理解する」のも大切かもしれませんが、霊性の高い人の「在り方」や「愛」を行間で感じることで、「私たちを応援する存在方がいる」という普遍的な事実を、あなたの人生の一つの視点に採用するために、この秘教学は役立つはずです。そして物質的な豊かさではなく、内面の成長のために、新しい時代の扉を開きましょう。

新しい見解、仕事に対する新しい態度、主観的な方法、これらに自分が賛成しているかどうかを自分自身で確かめなさい。現世的な野心に満ちた古い方法で働くことのほうを選ぶかどうかをきっぱりと決心しなさい。……… この新しい働き方に共感したならば、それにパーソナリティーを従わせなさい。瞑想生活を最高に重要なものに保ちなさい。主観的な領域に対する感受性を養い、必要とされる外的な活動を内から外へと向けるようにしなさい。純粋に神秘主義的な思索に浸ったり、その反対極である組織化の精神を過度に強調したりしないようにしなさい。真の秘教瞑想の生活は必然的に外的な出来事を生じさせるが、この客観的な結果は外的な活動によってではなく、内的な成長によって生まれることを覚えておきなさい。

(ホワイトマジック)